【第16号】神二でロングインタビューvol.3/新井清一さん
[神二でロングインタビューvol.3]
不動産も町会の仕事も 大事なのは人とのつながり
新井清一さん
6街を支えるキーパーソンにインタビューするこのコーナー。第3回の登場者は、神宮前二丁目エリアが加盟する「千駄ヶ谷二丁目町会」の町会長、新井清一さん。不動産会社の顧問として、町会長として、地元をよく知る新井さんに街との関わりや、自身の生い立ちを聞いた。
新井清一さん
あらい・せいいち/1943年生まれ。神二商和会に加盟している不動産会社「リッツウェル」(千駄ヶ谷2-7-5)顧問。2016年から千駄ヶ谷二丁目町会の町会長を務める。
文・撮影=松村小悠夏
年に100人以上と関わる町会長の仕事
千駄ヶ谷二丁目の町会長を務めて今年で3年目となる新井さん。地域に密着した不動産会社「リッツウェル」の顧問として昼夜問わずお客さんのもとを訪ねる、仕事人としてもバリバリの現役だ。
町会の役員さんたちに新井さんについて聞くと「歌がプロ並みに上手」「元バスケ部なだけにスタイルがいい」「自分が一回り年下なのに、いつも新井さんのほうが若く見られる」と、数々の評判に事欠かない。「いやぁ、若づくりしてるだけだよ」と笑う新井さんに、まずは町会長としての仕事内容を聞いた。
「ごみ収集のルールの整備とかイベントの運営とかさまざまあるけど、僕がいちばん大事だと思うのは、いろいろな人と関わることかな」。警視庁や消防署、NPO法人などの他、お祭りに向けて明治神宮や鳩森八幡神社の神主さんともお付き合いがあるという。
職業・立場・年齢問わず、どんな人とも関わらなければならない仕事。人付き合いが苦手な私からするととても大変な役割に思えるけれど、新井さんは昔から人付き合いが得意だったのだろうか?
「うーん。確かに幼いころから友達は多いほうだったけどね。ただ、誰とでも関わることができているとしたら、それは若いころから続けてきた不動産の仕事のおかげだと思うよ」。
30代半ばで飛び込んだ不動産の世界
新井さんがこの街にやってきたのは28歳のとき。大阪から上京し、神二の向陽ハイツに住んだ。数年後、友人と二人で六本木に不動産会社を立ち上げる。それまでは不動産業界とは関係のない仕事に就いていたという新井さん。なぜ「不動産」だったのかと聞くと、「資本がいらないからね」という答えが返ってきた。
「例えば八百屋さんだったら、最初に商品としての野菜を仕入れてお店も構えなきゃいけないでしょ。でも不動産はお客さまの建物や土地が商品だから、初期費用が少なくて済むんだ」。
その代わり最初は足で稼ぐ日々だった。馴染みのない六本木の土地で、朝から晩まで近くのマンションや会社をまわる日々が続く。
「不動産は人様の大事な財産だからね、信頼関係がない相手には任せられない。信頼を築くことがいちばんの近道なの。それには相手を選り好みなんてしていられないでしょ。それに信頼を築けば、最初は“自分と気が合わないな”と思っていた人に対しても、違う一面が見えたりするしね」。
小さくてゆるいつながりを大切に
現在は「リッツウェル」の顧問として千駄ヶ谷・神宮前の不動産に関わる一方で、街のリーダーとして活躍する新井さん。町会長として心がけていることを聞くと、「意外と、不動産の仕事と同じかもね」と答えてくれた。
「つまり足を使う・足で稼ぐってこと。例えば俺は、週に2・3回は、神二や千駄ヶ谷のお店で飲んでるんだ。もちろん楽しいからだけど、顔馴染みをつくるという目的もあってね。顔だけでも覚えてもらえたら町会を身近に感じてもらえるかもしれないし、加入する人も増えるかもしれない」。
町会長が采配を振るうから街が変わるのではなく、人のつながりで街が変わるんだと思う、と話す新井さん。
「小さくてゆるいつながりを一人ひとりが意識して大切にすることが、街を動かす大きな力になっていくんじゃないかな。……あれ、なんで俺、こんな真面目なこと語ってるんだ?(笑)」
今年9月に行われた、千駄ヶ谷二丁目町会のお祭り。お神輿は鳩森八幡神社を出発し、千駄ヶ谷二丁目〜神二をぐるりと周る
お祭りを取り仕切る「祭礼委員会」のメンバー。中央が新井さん
(写真提供=大友良一さん)
公開日:
最終更新日:2019/12/09