神宮前二丁目新聞

渋谷区神宮前二丁目でポット出版が作る、地元限定フリーマガジンのWEBサイト。 編集部が訪ねた神二(じんに)のお店も紹介してます。

*

【第4号】神宮前二丁目のウワサ bar bonobo(バー ボノボ)

4.神2新聞_第4号_bonobo15.神2新聞_第4号_bonobo2取材・文=田村美沙紀

ミラーボールと、ちゃぶ台と、DJブース。
何でもありのカオスなバー。

きっかけは、読者からのメールだった

 「近所にあるbar bonoboというお店が気になっていますが、1人で行く勇気が出ません。どんなお店なのか、詳しく知りたいです」。編集部に届いた取材依頼だ。下戸で飲み歩かない私にとって、バーは未知の世界。依頼がなければ訪問しなかっただろう。
 撮影は、神二の住人であり、競走馬などの馬専門のプロカメラマン・高草操さんにお願いした。朝早い撮影が多いため、いつも夜は早く寝てしまうという。取材直前の初顔合わせのため、恐縮しつつ22時に編集部に来てもらった。

22時半、恐る恐るbonoboへ向かう

 夜の世界とは無縁の私たちが、いざ店内に入ると、「いらっしゃい! 待ってたよ」の声がかかる。店員さんたちがあったかく迎えてくれてホッとした。この日は、オールナイトのイベント開催日。bonoboは様々なDJイベントが開かれることで、音楽好きに知られているらしい。
 ドキドキしつつカウンター横の防音扉を開けると、一気に流れ出してきた大音量のBGM。目の前に広がるのは、紫の照明とミラーボールが光るフロアだった。奥にはDJブースとバーカウンター、天井からはつららのようなオブジェが垂れ下がり、いかにもあやしい雰囲気が漂う。20人ほどのお客さんの中には外国人もいる。常連さんによれば「アメリカも多いけど、フランスから来た人もいるなぁ。どうやってここを知って来るのか、よくわからないんだけどね」とのこと。
 2階に上がると、薄暗い蛍光灯と、プロジェクターで壁に投影された映像が照らす、和室のフロア。ちゃぶ台に畳、ここまでは典型的な和室だが、ターンテーブルや、時折光がはしるスピーカーがある。そして片隅にある流し台。まるで誰かが住んでいたかのようだ。
 何もかもが異質な空間にいると、不思議とだんだん心地よくなってくる。無理して周りになじまなくてもいいやと、思わされるからだろうか。最初はガチガチに身構えていた人見知りの私が、初対面のお客さんと雑談できるまでになっていた。「あやしかったけど、地元にもこんな所あったんだって目が点。楽しかった」というのは高草さんの感想。夜の初心者をものの2時間で手なずけて、楽しいと言わせたbar bonobo、恐るべし。

ところで「リカリスイ」って何?

 bonoboと同じ建物では、他に2店が営業している。昼は別のお店になっているし、看板の「リカリスイ」も謎だし、この建物はどうなっているのだろう。bonoboオーナーの成さんに聞いてみた。
 「看板の『リカリスイ』はたぶん『リカー・リスイ』のことだよ。ここでは昔、台湾から来たリスイさんが酒屋をやってたから、その当時の看板がまだ残ってるだけ」。
 この建物は昭和35年に建てられたもので、正式には「リカリスイビル」という名前なんだそう。え、ビル? どう見てもビルとは言えないんじゃ…というツッコミは心の中にとどめ、リカー・リスイがbonoboへとどう移り変わっていったのか、さらに質問してみた。
 すると、今日までの変遷を語るうえで外せない人物がいたという。その名も「トラさん」。イヴ・サンローランなどの、オートクチュールで働いていた人らしい。トラさんは18年ほど前、リスイさんからこの建物を借りて1階で居酒屋を営業していた。成さんはそこの常連客だったという。「居酒屋の隣で、トラさんのパートナーがバーをやってたんだけど、ある日突然お店を閉めることになったんだよね」。以来トラさんもお店をやめ、2階の自宅部分で生活していたという。2階にあった流し台は、トラさんが住んでいた名残なのだ。
 そして12年前、トラさんを慕っていた常連たちが店子となって始めたのが、bonobo、江戸酒場 海、Ebony の3店。トラさんの死後は、成さんがリスイさんからビルを買い取ってオーナーとなり、友人たちにスペースを貸していった。結果、同じ建物に計6店が店を構えるようになったのだ。最後に成さんは、神二の人へのメッセージをこう口にした。
 「bonoboはよくあやしい店だと思われるんだけど、『神二にもひとつくらい、こういう遊び場があっていいかな』と思ってもらえたらうれしい。いつでもウェルカムですから、気軽にのぞいてみてください」。

●お話を聞いた人
成浩一さん(せい・こういち)
bar bonoboオーナー兼リカリスイビルのオーナー。
「bonoboを開く前は、ここを自分の音楽スタジオにしようと思ってたんだよ」と言うほどの音楽好き。DJとしても活動中。

●bar bonoboの撮影をしてくれた神二の人
高草操さん(たかくさ・みさお)
普段は馬や馬に関わる人を取材、撮影している。
「日本ロレックスpresents 日本列島 知恵プロジェクト」(http://www.chie-project.jp)で「にっぽん、馬紀行」を連載中。

「リカリスイビル」に6店が同居中!

リカリスイビルリカリスイビル 住所◆神宮前2-23-4

【夜】bar bonobobonobo音楽とお酒を楽しめるバー。DJイベントを月に約20回開催
営業時間◆19:00〜翌5:00 電話番号◆03-6804-5542 定休日◆日

【昼】うさぎおうどんP1090884_web関西風だしが自慢のうどん屋。おすすめはランチセット(780円)※テイクアウトOK!
営業時間◆11:30〜15:00 電話番号◆03-6804-5542 定休日◆土・日・祝日

【夜】EbonyP1220912_webチャージ料がかからない、カウンター席オンリーのバー。
営業時間◆22:00〜翌5:00 電話番号◆03-3796-8021 定休日◆月

【昼】rico curryP1030367_web野菜を多く取り入れた、バターチキンカレー(600円)など。※テイクアウトOK!
営業時間◆12:00〜14:30 電話番号◆090-5260-5208 定休日◆土・日・祝日

【夜】江戸酒場 海P1160193_web父子で切り盛りする立ち飲み居酒屋。郵便受けが入り口の目印。
営業時間◆17:00〜夜中 定休日◆不定休
「神宮前二丁目商和会マップ2015→2016」29番

【昼】◯よ(まるよ)P1060507_web2015年10月にオープンした海鮮丼屋。日替り丼(800円)など。※テイクアウトOK!
営業時間◆11:30〜14:00 定休日◆土・日・祝日

公開日: